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 昭和2年12月チェーン化の第一歩となった熱海に支店を開業しました。冬場の軽井沢はシーズンオフとなる為その期間の集客を狙った出店でした。シーズンオフともなると佐藤万平氏は東京や鎌倉で過ごすのが常だったそうです。そうした頃に熱海の伊豆山桃山に売り地を見つけ入手して開業にこぎつけました。その頃の熱海は急速に発展し始めており東京--熱海間が約2時間半の距離でした。
 開業は12月1日で、万平氏の四男、壮六氏が支配人となりました。地下一階、地上三階で木骨コンクリートで外装はモルタル塗り。洋室23室と和室5室の計28室で、宿泊定員は43人。
熱海万平ホテル
Atami mampei hotel
1927-1944.12
静岡県熱海市伊豆山

 地下にはバーとビリヤードがあり、1階のテラスから相模湾を望む絶景の地でした。絵はがき、ホテルラベルにもそうした眺めをデザインしたものがありました。

万平ホテル様からお借りしたラベル

熱海万平ホテル開業当時のもの
とされるパンフレット
 開業間もない昭和3年には竹田宮大妃殿下と禮子女王殿下の親子、次いで朝香宮若宮殿下が滞在。昭和5年には久邇宮殿下夫婦、昭和9年には陸軍士官学校在学中の後の三笠宮殿下が病気療養のため静養、などの記録が残っている。

 このように冬場の顧客を誘致するこのホテルも太平洋戦争の時局には存続できず、昭和19年12月には閉鎖をしてしまいました。そして翌20年8月10日に東京鉄道病院に売却しました。

 残念ながら、まだ熱海のこの地に足を運んではいません。相模灘を臨む絶景を是非体感したいものです。年月の流れでどのように変化してきたのか。そうした変化を知る楽しみ、寂しさが古きホテル探訪の意義かもしれません。