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東京ステーションホテル
Tokyo station hotel
1915.11- 2013.10.03再開業
東京都千代田区丸ノ内1-9-1
http://www.tokyostationhotel.jp/
 平成24年10月3日。東京駅の復元と共に新しい姿となり再出発を果たした東京ステーションホテル。その話題は東京駅の話題と共に年末から年始にかけては大混雑のこの近辺でした。真正面の元東京郵便局もKITTEとして開業。この丸の内界隈は当分の間は多くのの人を集め続けるでしょう。
 ただ、多くのメディアで取り上げ尽くされた感もあり、ようやく落ち着きも感じます。とはいえ、JR東日本の宣伝効果もあってか、単なるホテルということだけの魅力以上のものをこのホテルは提供できているのかもしれません。
 高層ビルの立ち並ぶ都会の真ん中に100年前の姿を蘇らせた東京駅。近代建築の中ではこの姿はむしろ違和感を感じさせるのかもしれないが多くの人に好感を持ってその再開業を受け入れられた。暫くは多くの人達が訪れ、写真に納めてこの姿に満足してゆくことでしょう。それに併設されたホテルだから、幾度も報道されてきた。リニューアルにより宿泊料金も若干高めとなりました。もはやクラシックホテルの仲間となったことからそれにふさわしい料金設定となったのでしょう。かつては松本清張、内田百間、川端康成、など著名な作家が宿泊し小説の舞台ともなったこのホテルの宣伝効果も、時代の流れと共にその部屋自身も宣伝材料とはならなくなり、敢えてそうしなくなってきたようです。確かに時代の流れと共に、そうした人達の名前だけでは集客も難しいのかもしれません。新しい時代に、新しい歴史の舞台となるべきホテルを目指してゆくことが賢明なのかもしれません。
再開業前、戦後に発行されたラベルに描かれた姿は今となっては懐かしいもの
 東京駅開業の翌年、大正4年11月2日に開業した東京ステーションホテル。精養軒時代、鉄道省時代、日本ホテル株式会社時代と経営主体は変遷してきました。
 精養軒から鉄道省に移った昭和8年12月27日に 「東京鉄道ホテル」(TOKYO RAILWAY HOTEL)と改称されました。その頃のラベルはレプリカにもなるものですが、今日ではそれを知る人は多く無いようです。

新装東京ステーションホテルの
タグラベル。ちょっと薄手で
軽い感じになってしまったのは
残念ではある。
東京駅のシンボルともなったドームを見上げ、写真に収める人は多い。ホテルの宿泊客の特典はそれらのレリーフ、装飾を
間近に見ることができるということ。長い歴史だからこそ披露できるこれまでの多くの資料。ホテル内の通路などには額に
入れられた写真、資料などがあり館内だけでも楽しめるようになっている。ドーム側の部屋に泊まらなくても、廻廊通路に
このようにドームを眺めることができます。セキュリティで制限されているので、残念ながら泊まらなくてはこうした楽しみ
を得ることはできませんが。建物、装飾など、ホテル自身が宿泊の目的ということがいえる数少ないホテルといえます。
 
再開業までの日々
開業まで20日を残した9月11日にふらりと東京駅へ。八重洲側の京橋から歩き、鍜治橋の交叉点を丸の内側へのガードレールを
過ぎてはとバスの営業所があるガード下を右手に東京駅の建物の方へ。改装後は八重洲と丸の内側へ通じる通路ができるそうで、
このような歩き方をすることはめったになくなるかもしれませんが、初めてこの道を歩き、先方に見える赤レンガの東京駅を見ると
なんともいえない雰囲気をかもし出す姿を見ることができます。高層ビルに囲まれたクラシカルな建築物。普通ならば、高層ビル群
の中に取り残された古建築物と捕らえられるのかもしれませんが、新しくこの姿が登場するという稀有な状況。個性の無い高層ビル
しか体感できないつまらない世の中にあって、人々の手作りを感じさせるこうした建築物はいつの時代になっても温かみを感じる建物
として私達の目に映ります。目の届く高さ。矢張りこれが必要なのです。人の身長は変らないのですから。
 めでたく開業してしまえば、こうした工事中の様子などはなつかしいものとなってきます。工事中にたてられた柵などに描かれたイラ
ストや説明文などももう無くなりました。いざなくなってみると、それすらも懐かしい光景となるものですね。さ、次は開業ですね。
東京駅の正面玄関。この入口からはどんな人が入ることが
出来るのでしょうか。
丁度中央部分のましたがホテルの入口となります。
まだ被いがあり、開業まで突貫工事でしょうか。
 東京丸の内地区のホテル開業。今度は平成24年10月3日に開業する東京ステーションホテル。駅の外観は戦前の姿を取り戻すという。長い改修の末ようやくその姿を一部表した。5月17日、パレスホテル開業の日にその前を通ってみた。確かに戦前の絵はがきと同じ姿が。開発と称して多くの名建築が姿を消し、味気ない高層ビルとなってしまった都会にこのように、いかにも手の込んだ構造物を見ると圧倒される。東京の新たな名所となることは間違いなく、その完成が今から楽しみである。東京ステーションホテルは近代的なホテルになるというが、その前の様子を実際に泊まってみたことがないだけに、外観とアンバランスなものでないことを願っている。
 終戦間際の昭和20年5月25日の空襲により開業当初の丸型屋根は全焼してしまいました。現在改装中の東京駅は当時の様子を復活する予定で、再開まではまだ掛かるようです。戦後国鉄は交通公社に経営権を委譲されました。戦災による被害もあり接収は免れましたがホテルが再開するのは昭和26年からでした。その頃には「東京ステーションホテル」と名を戻していました。

 左のタグラベルは精養軒時代(つまり昭和8年以前)の珍しいラベルです。後ろには日本語で精養軒 東京ステーションホテルと書かれています

上のタグラベルとラベルは共に戦後のものです

 1990年に発行された右の小冊子「東京ステーション物語」では40ページと量は多くはありませんが東京ステーションホテルに関する資料としては充分の内容です。
 種村直樹氏による「東京ステーションホテル物語」(集英社)では、宿泊した著名人のエピソード、時代背景の考察など、より詳細なこのホテルの魅力を知ることができます。この書には、これまでのホテル史の記述の修正も記載されており(たとえば開業日 11月28日ではなく、11月2日が正しい)大変楽しめるこのホテルの資料として有効です。 
 ともあれ改築後の東京ステーションホテルの再開が期待されます。小説の舞台、創作の場として愛好されたホテルが、これからの新しい時代にまた新たな一面を展開することでしょう。

この絵葉書だけが戦後の東京駅の様子